データビジュアライゼーションの重要性

2022.03.17

※ この記事は、2022年1月にGIS専門誌へ掲載された内容です。

マーケティングの基礎は各種のデータを可視化することです。エリアマーケティングにおいてGISを用いてターゲティングエリアを地図上に表現することが、まさにこのデータビジュアライゼーションです。

現代ではコンピュータ技術と通信技術の進化によって、あらゆるデータを大量に蓄積することが可能になりました。わが国では各企業がさまざまな種類のビッグデータを所有しており、マーケティングに有効活用することで業績拡大を図りたいと考えています。しかし、現時点では残念ながらこれを効果的に活用できている企業はまだ少ないと言わざるを得ません。今回はこうした状況を改善する一助にと考え、一例としてBIツール「Tableau」を用いてその効果を考察します。

BIツールが果たす役割

BIツールとはBusiness Intelligence Toolのことです。各企業に蓄積された多様なビッグデータを目的に応じて可視化し分析することを目的として開発され、1990年代後半から急速に普及し始めました。 各企業は受注や売上、営業活動など、さまざまなデータをデータベースに蓄積し分析を行うためのDWH(データウェアハウス、データの集合体)を構築しています。BIをDWHに接続することで、企業内で蓄積したデータを素早く可視化することができるようになります。企業内で発生するさまざま課題に応じたデータを取得して数表やグラフの形式で可視化し、目的に応じて組み合わせた「ダッシュボード」という形で保存しておくことで、事象や課題を一目で確認することができるようになります。

BIツールは企業の戦略立案や方針決定の高速化に威力を発揮します。たとえば小売業では、新規出店の検討会議は多くの場合に現場担当者に加えて決裁権のある役員を交えて開催されます。役員が出席するような重要な会議では、あらかじめ用意したストーリーに沿って数表やグラフを用意し、プレゼンテーションが行われます。仮にその途中で役員からストーリーの中にない提案がなされたときは、これまでは担当者はその提案を持ち帰って分析し直して、次回の会議で提示することが一般的でした。BIツールがあれば必要に応じて役員の関心に沿ったデータをその場で素早く可視化できることから、判断材料をリアルタイムに提示することが可能になり、結果として出店判断を素早く行うことができます。問題解決型のデシジョンツールと言えます。

価格とユーザビリティで支持されるBIツール「Tableau」

ここに一例としてTableau(タブロー)を紹介します。

Tableauは2003年米国スタンフォード大学のコンピュータサイエンスプロジェクトから誕生したBIツールです。Tableau社のWebサイトによると「データから答えを短時間で引き出して予想外のインサイトを見出そうとする、あらゆる人々を支援するためのソリューションを開発しました。その一端として、機械学習や統計、自然言語、スマートなデータ準備をさらに実用的にして、分析における人の創造力を拡張しています」とされています。少々分かりづらい表現ですが、専門的な知識や特別な技術がなくとも、ビッグデータを誰もが簡単に可視化し、自由に組み合わせて分析できるツールです。

Tableauは現在、国内で4,000社以上の企業において導入されています。2013年の日本法人の設立を契機に本格的に展開されました。それまで数千万円~数億円の導入費用が必要と言われていたBIツールにおいて、12万円~(当時)という低価格や、ドラッグ&ドロップを主体とした使いやすいGUIをアドバンテージに急速に普及しています。

Tableau製品はデータを可視化し、分析するためのアプリケーション「Tableau Desktop」をはじめ、分析結果をオンプレやクラウド環境で共有する「Tableau Server」や「Tableau Online」、目的に応じてデータを整形できる「Tableau PrepBuilder」など、データの準備~分析~共有まで一貫して実施できるソリューションが用意されています。また教育機関向けのアカデミックプログラムも用意されています。

弊社(ZMS)のユーザー企業からも、安価に導入できること、取り扱うことのできるデータの規模に制限がなく様々なデータベースとの接続が可能で、しかも高速に処理できることから高い評価を頂いています。

さまざまな空間データを可視化できる

近年、空間データを可視化できるBIツールは増えてきました。BIツールは少しずつではありますがGISの機能の一部を取り込んできており、これまでにないリッチな地図表現や空間分析が行えるようになってきています。

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図1:Tableau による地図を用いたデータの可視化例

Tableauは数あるBIツールの中でもとりわけ空間データの可視化にも優れています。概ね1年間で3~4回程度の大規模なアップデートされていますが、これまでのバージョンアップのたびに地図に関する機能を新規に追加されてきました。2017年2月のリリースでは、シェープファイルやKML、GeoJSON、MapInfo TAB形式といった主要な空間データの可視化に対応しました。その後にも日本向けの地理情報が充実し、市区町村や郵便番号(7桁)のマッピングにも対応しています。さらにGISと同様に複数のデータを地図上にレイヤとして重ねて表示す

ることができるようになったことで、地図の表現力が大幅に向上しています(図1)。

弊社でも、Tableauを用いた空間データの可視化や分析の事例が増えてきました。ここではTableau用いて流動人口データを可視化し、出店判断に用いた一つの事例を紹介します。

事例紹介:コーヒーチェーン店の出店計画

コーヒーショップなど飲食店の新規出店候補地を選定する際に重要なのは、国勢調査人口や昼間人口では数字として表れにくい、出店候補地付近で流動している、あるいは滞在している人口を把握することです。

近年では、携帯電話の位置情報をもとにエリア内の滞留人口を時間帯別に地域メッシュ単位で推計した「モバイル空間統計(株式会社ドコモ・インサイトマーケティング)や「流動人口統計(株式会社Agoop)」、「あさひる統計(株式会社楽しいチリビジ)」などがあり、商圏分析を行う際の貴重なデータとして活用されています。

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図2:立川駅の北側と南側物件の商圏規模と時間帯別滞留人口

ここで、あるコーヒーチェーンが立川駅周辺に新規店舗を出店した時の事例を紹介します。出店担当者は、立川駅付近の地元の不動産仲介業者に、計画しているコーヒーショップに適した店舗規模の物件の問い合わせをしました。すると立川駅を挟んで北側と南側にそれぞれ条件に該当する候補物件を紹介されました(図2 地図)。さっそくそれぞれの店舗周辺の昼夜間人口を調べ、両物件とも商圏規模として充分であることを確認しましたが、出店を検討するには商圏規模に加えて時間帯別の店前通行量や周辺エリアの滞留人口を把握しておく必要があります。そこで立川駅周辺の人流データを入手して、Tableauを用いて可視化し分析を行いました。

2つの物件のうちどちらに出店をするか、決定打となったのは時間帯別滞留人口の「ピークとなる時間帯の違い」でした。平日のピークに着目すると、北側は12~15時、南側は18~21時と大きく違うことがわかりました(図2 折れ線グラフ)。一般的にコーヒーショップは昼間に需要のピークを迎えることから、出店に適しているのは北側の物件だと判断することができました。ちなみに南側の物件は「ちょい飲み」の居酒屋店に適していると言えます。この分析結果を店舗開発会議に提示して、出店可否を素早く判断することができました。

このように、Tableauを活用することで空間データを誰もがわかりやすい形で可視化できることから、会議内で共通理解を得やすくなり、意思決定を素早く確実に行うことができます。

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