エリアマーケティングの基本的概念

2022.04.06

※ この記事は、2004年7月にGIS専門誌へ掲載された内容です。

データマップ鳥瞰図の1例

図1 データマップ鳥瞰図の1例

商圏分析を行うのに必要な各種のデータはあらかじめ整備しておくことが重要だ。例えば人口や世帯、あるいは所得や消費支出の統計データ、また競合店などのポイントデータ、鉄道、道路、河川などの地図データをGISを活用して分析する訳だが、この分析は概ね「鳥瞰分析」、つまり、空から“鳥の眼的”に分析することをイメージする。

一方、これに対し現地調査はその場所を隈なく歩き回り細かなことをも見逃さない“虫の目的”分析、つまり、「虫瞰分析」である。

つまりエリアマーケティングはこの鳥の眼と虫の眼を併せ持って進めることが望ましい。これまではどうしてもこの肝心な鳥の眼が不足しており理想のエリアマーケティングが展開できていなかった。

GISの導入は、この不足していた鳥の眼を補うに余る数値のビジュアル化も可能にしているので、理想的なエリアマーケティングが可能になったのである。

データマップ鳥瞰図の1例

図1 データマップ鳥瞰図の1例

砂漠でオアシスを探すとしよう。現実として、おそらくこのような経験をすることは無いと思うが仮の話にして考えて欲しい。

先ず、どうやって探すのか?多分、今なら人工衛星からリアルタイムに送られてくる画像を基に緯度経度を確認し、そのオアシスをピンポイントで特定することは勿論、そのオアシスの樹木の茂り具合も把握できると答えることができるだろう。

しかし、これも、元はといえば仮の話であり理屈として考えれば、歩いて探す?ジープで探す?ヘリコプターで探す?セスナで探す?ということになる。答えは誰でも分かるはずである。砂漠が大きければ大きいほど、広い範囲を一望できる高いところから探す方が良い。

地面をただ根気よく歩き回っていても、よほどの幸運か偶然にでも出くわさない限り見付ける事は不可能だ。

空高くから見渡して、幸いにもオアシスが見付かったとして、今度はそのオアシスにどのような泉があり、水の量や冷たさなど、また、どんな樹木が茂っているのか?どんな生物が生きているのか?など空の上からでは確認できないのである。

ある事柄を正確に知るにはそれなりの手段と方法がある。この例えで言えば、オアシス探しは鳥の眼の「鳥瞰マーケティング」、泉の水温を知るのは虫の眼の「虫瞰マーケティング」である。

エリアマーケティングにはこの二つの眼が必要だということは上にも述べたが、今回はこの「鳥の眼」も対象とする範囲や目的によって“高度”が違うということを確認しておこう。

地図のレベルは鳥の眼の高さ

エリアマーケティングの眼の高さ

図2 エリアマーケティングの眼の高さ

ここでいう高度とは扱う地図のことを指している。GISを活用して取り組もうとしているマーケティングは、ほぼ鳥瞰マーケティングである。そのマーケティング業務の内容によって扱う地図が違うことを“高度が違う”と考えている。(図2参照)

高度は高ければ高いほど広域を見渡せるが大雑把な判断しか出来ない。高度が低くなるに従って範囲は狭くなるが、より詳細なことが把握できるのだ。しかし、ここでいう詳細は鳥の眼で言う詳細であって虫の眼に適うものではない。

例えば、ある企業が日本全国の自社の顧客分布を見たいときなど、表示するエリアは500mメッシュや町丁目か、あるいは市区町村エリアかと言うとそうではない。これらはいずれも細か過ぎて見難いはずである。この場合はやはり47都道府県エリアに集計して見ることが常道だろう。これを高度で考えると、日本列島を一望できるかなり高い場所から見ることになる。それは現実的な話ではないが人工衛星から眺めるといった行為になる。つまり、地図は47都道府県行政界地図(あるいは企業の支店エリアと言うこともある)である。この全国47都道府県の顧客分布図を見て顧客獲得率の悪い県を発見したとしよう。

今度はその県の上空に飛び、市町村エリアの顧客獲得状況を把握することになる。このときの高さは例えばジャンボジェット機の高度くらいであろう。地図は市区町村エリア地図に河川、湖沼、鉄道、主要幹線道路程度の地理的条件が判る地図が必要だ。

次に、この市区町村エリア地図で見て成績の悪い市を見付けたらその市の上空から市全体を眺められるところまで高度を上げることが必要である。今度はセスナ機くらいの高度であろうか。そして、地図は町丁目か500mメッシュであろう。

更に市内でどのエリアに多くの顧客が集中しているのか、また自社店や競合店の配置などを把握する必要がある場合は上空からであればヘリコプター、地上からであればジープ(車)ということになる。地図は2500分の1街区図とか住宅地図ということになる。

そして、最後には現場を歩いて実態調査をするという段取りであろう。例えば、そのエリアは商業地か住宅地か、戸建住宅か共同住宅どちらが多いのか、道路は広いのか狭いのかまではいわゆる“鳥の眼”でも何とか確認できる。しかし、その道路が平坦なのか坂道なのか、中央分離帯があるのかないのか、あるいは時間帯別の交通量は車、自転車、徒歩のそれぞれがどのくらいなのかなどは“虫の眼”の調査が必要だ。

蛇足ながら、この虫の眼調査で得ようとするデータを対象地域全域にあらかじめ実施し、これをGISに整備しようとすると膨大な費用が嵩むことになる。技術的に可能なことでも費用対効果を考えると無駄なことも多い。エリアマーケティングで陥りやすい落とし穴であるのであえて付け加えておきたい。

エリアマーケティングの眼の高さ

図2 エリアマーケティングの眼の高さ

販売戦略の事例

ある企業がGISを活用して全国47都道府県を対象に販売促進計画を企てた。詳しいことは省くがこの戦略のプロセスを紹介しよう。図2で示す「エリアマーケティングの“眼”の高さ」が使用する“地図”を意味している。これを理解できると実際の業務にどの地図がどの範囲で必要かなど自ずから判るはずである。

全国47都道府県に各県の市場ポテンシャルに対する現在の売上の相関を示すオーバレイマップである。ポテンシャルが高いにもかかわらず売上の低い地域は赤が濃く表示されている。(人工衛星の眼)

次に、この赤で表示されている県(ここでは例として新潟県)を今度は市町村エリアで表示した。同様に赤で表示されている市町村は成績が悪いことを意味している。(ジャンボ機の眼)

今度はその成績の悪い市(ここでは例として長岡市)を取り出し町丁目エリアで表示した。やはり赤いエリアが成績の悪いエリアである。市場ポテンシャルがあるのに販売できていないエリア。(セスナ機の眼)

そこで、今度はこの赤いエリアに近付いて詳しく調べることにした。エリアシェアを示す町丁目エリア図の上に販売店の売上をサイズ別に示すポイントを表示した。売上の高い販売店に成績の悪いエリアを示しチラシなどの具体的戦術を指示する。(ヘリコプターの眼)

次は、その指示に従い対象エリアに既存顧客をプロットし更に詳しく販売状況を把握する。そして、その結果を踏まえた調査を実施し具体的な販売促進計画を立案する。(ジープの眼)

最後は営業マンが対象となるエリアのターゲット顧客一軒一軒に直接営業を開始するという段取りになる。

更には、その営業行為で得た情報を商談成立、不成立にかかわらずGISに取り込んでおくと次の営業に必ず役立つ情報になる。(人の眼)

日本列島の上空からどんどんと高度を下げ、最後には何処の誰にまで辿り着く具体的なマーケティングを可能にした。計画を立てる人から意思決定をする人、実際に行動を起こす人すべてに判り易いマーケティングの提案が可能となった。これがエリアマーケティングの最大の強みである。

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