GISをCRMやFSPに活かす

2022.04.25

※ この記事は、2005年1月にGIS専門誌へ掲載された内容です。

小売店への提案

現在の小売業は合併や吸収が相次ぎ、それによって大手小売業は更に大きくなり、商品中心のビジネス構造を最大限効率化しようとしている。その代表的な戦略はPOSデータの活用により各店で単品単位にどのくらい売れているかなどの情報を素早く把握し、自店の商圏特性に合った品揃えをするというものである。そして、当然のこととして、陳列レイアウトや棚割などのインストアマーチャンダイジングを強化するといった作戦である。

ここで、重要なのは“商圏特性に合った品揃え”をするには具体的にどうするかということである。

元来、商品はその商圏の顧客が欲しがるものを品揃えするということである。つまり、個々の顧客を見極めて商品や買物そのもの個人に合わせるということになる。

これらのことを、現代風に、CRM(Customer Relationship Management) やFSP(Frequency Shopper Program)という手法で行うといっている。

これを簡単に説明すればCRMは顧客の連携によるマネージメントする手法、また、FSPは顧客がカードを利用して買い物をしたデータを基に顧客の買物動向を把握する手法。つまり、商品中心のビジネス構造は顧客の購買履歴や買物動向によって作られているという、いわば当たり前の手法である。

前回の提案は正にこの顧客の購買状況をGISに取り込み地理的に分析した例であったが、今回はこれをエリアに集計し新聞チラシ計画に活かした例を紹介しよう。

デパートをケーススタディーに提案 その②

先回の提案はFSPによるデータをGISに取り込んで地理的に分析するというものであった。具体的にはこの分析によって、このデパートの顧客属性別分布がビジュアルに表現され、どの地域にゴールド会員顧客を求めるプロモーションをかければよいかが明らかになった。

今回は、これを新聞の折り込みチラシを使って新規顧客の開拓を提案する。

先ずは、先回表示した個々の顧客の属性を新聞販売店エリア地図単位に集計して、効果的な計画を立案する。この時、同じエリアに複数の新聞が配られていることを考慮し、予算に合わせて、どの新聞の、どの販売店にチラシを入れるのが効果的かを検討する。

目的は前回と同様にゴールド会員の募集キャンペーンである。

ターゲットエリアを分析する

既存のゴールド会員顧客分布図(主要顧客検索表示:図1)の上にA新聞社の販売店エリア図を重ねて表示する(図2)。同様に今度はB新聞社の販売店エリア図を重ねて表示する(図3)。更に必要と考える場合はC新聞社の販売店エリア図も重ねて表示する。

各新聞社の販売店エリア図内に主要なゴールド顧客が多く見られるかを確認し、ターゲットエリアを各新聞社の販売店エリア単位に袖出する。そして、ここに抽出された販売店の配布部数が何部で、既存ゴールド会員顧客が何人いるかを把握する。

商圏マップの画像

図1 既存ゴールド会員顧客分布図

商圏マップの画像

図2 A新聞販売店エリア図

商圏マップの画像

図3 B新聞販売店エリア図

新聞販売店エリア図に各種データを整備する
その上に顧客を集計し表示する

各新聞販売店エリアの特性を把握するために、各々の新聞販売店エリア単位に各種の情報を整備する。ここで必要なデータとは人口総数、年齢別・性別人口、昼間人口、所得、住居形態などである。しかし、新聞店エリアは、各新聞社が独自に決めたエリアなので、必ずしも町丁目行政界などと一致しているわけでない。そのため、各種のデータは何等かの方法で推計をしなければならない。ここでは、背景に500mメッシュ統計データをおき、その上に販売店エリアのポリゴンを重ね、係ったメッシュの面積按分で集計したデータを推計値としている。

そして、個別にプロットしたゴールド会員、通常会員、総会員を同新聞販売店ポリゴンに集計し、推計されたデータと共に各種の主題図を作成することにした。

顧客分布図を作成しエリア特性を把握する

図4はこのデパートの総会員化率を新聞販売店のエリアに集計し緑の濃淡3ランクで表示したものである。特に店の南東部が色が濃く、遠くになるに従って色が薄くなっているのがわかる。

図5は年収1000万円以上世帯数(赤の濃淡3ランク表示)を示したものである。

図6は図4と図5のオーバーレイである。赤が濃く表示されるエリアは年収の高い世帯数が多いのに会員化率が低い事を示している。緑色が濃いエリアはその逆で、年収の高い世帯数は多くないのに会員化率が高いことを意味している。

商圏マップの画像

図4 新聞販売店エリア別会員化率

商圏マップの画像

図5 年収1000万円以上世帯数

商圏マップの画像

図6 会員化率×年収1000万円以上世帯数オーバーレイマップ

潜在顧客ターゲットエリアを見つける

同様の方法で各種のデータを基に会員、特にゴールド会員が潜在的にいるエリアを探り出し、そのエリアに新聞オリコミチラシを配布するという作戦を展開する。

商圏マップの画像

図7 条件を満たすエリア

仮説を立ててターゲットエリアを抽出する

これまでのエリア分析で

  • ターゲットエリアは電車30分圏内
  • 会員化率(総会員数/総世帯)1%以上
  • ゴールド会員率(ゴールド会員/総会員)10%以上
  • 1会員当たりの年間購買金額が高い

この様な条件を満たしているエリア(図7)の特性を分析して見みると

  • 年収1000万円以上世帯数が多い
  • 戸建て住宅数が多い
  • 年齢階層50歳代世帯数が多い

ということが分かった。この結果は当然、想像していた通りであるが、この分析を何も持たないで、新聞販売店エリア単位に、しかも、店舗から30分圏内になどの地理的条件を加えて同時に分析するのは不可能である。これが簡単にできるのやはりGISのお蔭である。

商圏マップの画像

図7 条件を満たすエリア

商圏マップの画像

図8 条件検索で抽出されたエリア

各新聞社の販売店エリア単位に予算に合わせたターゲットエリアを設定する

図8が示すのはこれらを踏まえて、条件検索で抽出された新聞店エリアである。このエリアの配布部数をトータルして、チラシ1部あたりの印刷代やオリコミ代などの費用をかけるとこの時点でいくらの経費が必要かがわかる。仮に予算をオーバーする場合は条件順でカットすればよい。これを、配布を予定している複数の新聞社の新聞販売店単位に順次行えば少なくとも的外れな配布にはならないはずである。

更にはこの計画で配布した反応などもう一度GISに取り込み検証すれば、その蓄積が必ず今後のチラシ計画のノウハウになるはずである。

商圏マップの画像

図8 条件検索で抽出されたエリア

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