よりキメの細かい商圏分析が可能になった!
GIS専門誌に掲載していた記事が公開できることとなりました。
過去を振り返ることにより、現在のヒントになることは意外と多いものです。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。
※ この記事は、2006年7月にGIS専門誌へ掲載された内容です。
GISを用いた商圏分析がますます盛んに
多店舗展開する大手の小売業、飲食業、サービス業などではより精密なエリア分析が要求され、また、日用品や飲食料品などのメーカ、医療・福祉、教育のような分野においてもエリアマーケティングの手法を取り入れ、地域の特性を見極めようとする動きが広がっている。
こうした動きは、市場環境の厳しさから必然的に必要となったという面もあるが、統計データを含めてGISソフトが価格面や機能面で改善され、容易に商圏分析データが入手・作成できるようになったことも大きな要因であると思う。
商圏分析と一口に言っても、その手法は各種各様、分析者の視点によって全く異なるが、先ずは国勢調査地域メッシュ統計のような統計データをGIS上に整備し、想定される商圏内にどれ程の人口・世帯数があるかを調べることがまず分析の第一歩となっている。
国勢調査地域メッシュ統計は、行政界に影響されず距離や地形、道路・鉄道などによって規定された商圏内の人口・世帯数などを集計するのに有効なデータとして利用されているが、集計単位は4次メッシュ(500m四方)であるため、ごく限られた狭い範囲内でデータを見る場合には、ある種の粗さが伴なうのも否めない。
特に、コンビニエンスストアやドラッグストアなど店舗から徒歩で5~10分程度の範囲が商圏となるような業態においては、より細かいレベルの統計データが要求されるようになってきている。
100mメッシュ推計データで大きな違いが明きらかに
例えば、ある4次メッシュが人口500人、自店の商圏がそこに面積比20%で重なっていた場合、これまでであれば100人が商圏内人口として換算されることになる。(図①)
しかし、仮にその4次メッシュに広く公園が重なって、500人は左下部の100mメッシュ4つに集中していたとすると、500人全てが集計されることになる。(図②)
これは図式の中だけでなく、現実に生じ得ることであり、図③は、ある店舗から半径350m内に含まれる人口を4次メッシュと100mメッシュとで結果を比較すると、実に850人もの差が生じていることを示している。
このような差異は、小商圏型の業態にとっては看過できない大きな差異である。出店の可否の検討をしていたならば、結果に大きな影響を与えかねない。
このように従来よりさらに緻密できめ細かい商圏分析をする動きが広まってきており、またそうしたことが容易に可能になっているのである。
著者紹介
平下 治
株式会社ゼンリンマーケティングソリューションズ 顧問。1943年生まれ。
地理情報システム学会GIS 資格認定協会「GIS上級技術者」第1号認定
1979年エリアマーケティング専門コンサルタント会社、株式会社JPSを設立。以来マーケティング分野のGISの開発、データコンテンツの企画・製作、GIS運用コンサルティング業務に41年間従事し、延べ1,000企業以上への提案・実践の実績を持つ。
エリアマーケティング関連著書・専門誌への投稿も多数。
また、セミナーや研修では日本全国各地はもとより米国、中国、香港、セルビアなど海外講演も多数。
ビジネスGISの草分け的存在でわが国の第一人者。