所得や年収がわかるエリアデータ

GIS専門誌に掲載していた記事が公開できることとなりました。
過去を振り返ることにより、現在のヒントになることは意外と多いものです。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

※ この記事は、2007年1月にGIS専門誌へ掲載された内容です。

長い間待ち望まれていた所得・年収がわかるエリアデータ

住宅・不動産、自動車や輸入家具のような高額の商品のマーケティングにおいては、ターゲットの収入・所得レベルを把握することは非常に重要であり、販売に大きな影響を与える要素である。

高額商品であれば、「ターゲットのお金持ちが多い地域はどこか?」であるし、中流所得層がターゲットであれば中流所得世帯が多い地域を探り、ターゲットエリアを絞り込むうえで、収入・所得レベルがわかるエリア統計データが非常に望まれているのである。

「国勢調査」は最も基礎的かつ網羅的な統計データとしてエリアマーケティングに活用されているが、世帯の収入・所得に関する項目は含まれていない。

また一方で、市町村ごとの課税対象所得額を用いて平準化した「個人所得指標」というデータを活用したり、あるいは高額納税者名簿を地図上に展開して所得の高い地域を探し出そうとするなどの試みも累々と行なわれてきたが、いづれも「帯に短したすきに長し」であった。

実際問題として、エリアマーケティングに活用できるような世帯の収入・所得に関する統計データというのは、長い間、無いに等しい状況であったのである。

「年収階級別世帯数推計データ」とは

「年収階級別世帯数推計データ」は、そうした状況の中、「住宅・土地統計」と「国勢調査」という2種類の統計データを出典とすることによって地域の年収階級ごとの世帯数を推計・算出したもので、株式会社JPS(現:株式会社ゼンリンマーケティングソリューションズ)が2003年以来、企画・制作・販売をしている。

「推計データ」ということで正確性について懐疑的に見る向きもあるのだが、正確な調査統計もないという現状では、一つの目安として多く活用されており、エリアマーケティングの現場で好評を得ている。

年収レベルごとの地域のターゲティングが可能になった

図①は、「年収階級別世帯数推計メッシュデータ」を用いて地図上に主題図表現をしたものである。緑色の濃い地域には、年収1000万円以上の世帯数が多いということを表している。

また、図②は「年収階級別世帯数推計町丁・字等別データ」を地図上で表現したものであるが、黄色の地域は、総世帯数が多く、かつ年収1000万円以上世帯の比率が高いということを表している。

例えば、高年収世帯をターゲットとする商品を訴求する折込チラシ配布を考える場合、このような黄色の地域を中心に配布すると多くのターゲット世帯に効率よく到達できるということが一目でわかるのである。

図1「年収階級別世帯数推計メッシュデータ」

図①「年収階級別世帯数推計メッシュデータ」

図2「年収階級別世帯数推計町丁・字等別データ」

図②「年収階級別世帯数推計町丁・字等別データ」

著者紹介

著者近影

平下 治

株式会社ゼンリンマーケティングソリューションズ 顧問。1943年生まれ。
地理情報システム学会GIS 資格認定協会「GIS上級技術者」第1号認定
1979年エリアマーケティング専門コンサルタント会社、株式会社JPSを設立。以来マーケティング分野のGISの開発、データコンテンツの企画・製作、GIS運用コンサルティング業務に41年間従事し、延べ1,000企業以上への提案・実践の実績を持つ。
エリアマーケティング関連著書・専門誌への投稿も多数。
また、セミナーや研修では日本全国各地はもとより米国、中国、香港、セルビアなど海外講演も多数。
ビジネスGISの草分け的存在でわが国の第一人者。

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