小売店を網羅したGISデータ

GIS専門誌に掲載していた記事が公開できることとなりました。
過去を振り返ることにより、現在のヒントになることは意外と多いものです。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

※ この記事は、2007年4月にGIS専門誌へ掲載された内容です。

いかに有用なポイントデータを用意するか

エリアマーケティングの運用にあたっては、地図データ、統計データだけでなく、いかに有用なポイントデータを準備し、効果的に活用するかが非常に重要なことである。

小売業にとって、競合店データの整備はその一つだが、単に同業の店舗だけを準備すればよいというわけではなく、近年においては、流通チャネルの多様化が進み、異なる業種・業態からマーケットを侵食するケースも多いことから、自社の販売に影響を与える業種・業態は広く競合として把握しておくことがマーケティング上、必要不可欠なこととなってきている。

また一方、日用品や食品などのメーカーにとっては、自社商品の取扱店がデータベースとして整備されていないケースも多く、どの地域に、どれくらい販売する取扱店舗が何店あるか、またどの地域でどのような業態店で取扱いを増やしていくか、といった基礎的なことを把握することができず、エリアマーケティングを進める上での障害となっていた。

エリアマーケティングの要請に応える「DARMS」とは

「DARMS」は、こうした企業の実情を踏まえて企画された、業態網羅型の小売店ポイントデータであり、1998年の発売以来、多くの企業のエリアマーケティングに活用されてきた。「DARMS2006」は、生活協同組合、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、バラエティストア、百貨店、ホームセンター、薬局・薬店、GMS、ショッピングセンターの9業態、約15万店舗を収録している。属性情報は、名称、住所、電話番号、企業名といった基本的な情報である。(旧版には、売場面積、年商などの項目もあったが、収録率が低いため2006版から廃止された)

企業のDARMS活用法

小売業においては、この「DARMS2006」を競合店のデータベースとして、例えば食料品スーパーであれば、同業態だけでなく、食料品市場に影響を与えるコンビニエンスストア、生協、GMSや大きな顧客吸引力をもつショッピングセンターなどの分布を把握し、新規店舗開発や販売促進の企画に用いられている。(図1参照)

また、日用品や食品などメーカーにおいては、「DARMS」を地域の小売店舗の基礎データとしてとらえ、自社の販売データとリンクさせて販売店マスタデータとして地域の業態別の販売店分布状況を把握し店舗の販売促進の企画に役立て、あるいはこれにより自社商品の未取扱店舗を見つけ出し、ターゲット層が多くいる地域にあり販売額を見込める店舗を絞り込むなどして、新規開拓営業のリストとして有効活用しているのである。(図2参照)

図1

図1 「競合店のデータベース」

図2

図2 「地域の小売店舗の基礎データ」

著者紹介

著者近影

平下 治

株式会社ゼンリンマーケティングソリューションズ 顧問。1943年生まれ。
地理情報システム学会GIS 資格認定協会「GIS上級技術者」第1号認定
1979年エリアマーケティング専門コンサルタント会社、株式会社JPSを設立。以来マーケティング分野のGISの開発、データコンテンツの企画・製作、GIS運用コンサルティング業務に41年間従事し、延べ1,000企業以上への提案・実践の実績を持つ。
エリアマーケティング関連著書・専門誌への投稿も多数。
また、セミナーや研修では日本全国各地はもとより米国、中国、香港、セルビアなど海外講演も多数。
ビジネスGISの草分け的存在でわが国の第一人者。

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