地域の所得水準の高さを比較

GIS専門誌に掲載していた記事が公開できることとなりました。
過去を振り返ることにより、現在のヒントになることは意外と多いものです。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

※ この記事は、2007年7月にGIS専門誌へ掲載された内容です。

“量”だけでなく“質”を表すデータが求められる

GISを用いたエリアマーケティングを展開するにあたって、地域の特性を示すデータは、多くのマーケッターにとっての重要な関心事項である。

どのような特性を持った地域に店舗を作るか、どこの地域の店舗に商品を配荷するか、地域特性に合わせてどんな品揃えをするか、どんなプロモーション展開を行うか・・・このような基礎的な事項をマーケッターが検討するとき、人口や世帯数など“量”の情報だけでなく、“質”の情報、つまり生活レベルや、特に収入・所得の水準に関する情報が決定的に重要になってくる。

「個人所得指標」とは

図1

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地域の所得の水準を表すデータベース「個人所得指標」は、1972年以来、株式会社日本マーケティング教育センターから毎年刊行されてきたデータ資料集である(2005年より株式会社JPS「現:株式会社ゼンリンマーケティングソリューションズ」が継承)。

自治体ごとの課税対象所得額総計を人口一人当たり額に置き換え、全国・県平均と比較できるよう指標化したものであり、その市町村の所得の水準がひと目でわかる市町村データである(図1)。その他「所得シェア」、「小売シェア」といったデータ項目もある。

日用品・食料品などの最寄品型のエリアマーケティングにおいては、例えば「商圏は半径1km」などとメッシュや町丁字の統計データが必要とされることが多いため、市町村データでは使えないと考える向きもある。

しかしながら、ブランド品のような買回型の商圏も非常に広い場合には、市町村単位のデータでも有効に活用できるケースが出てくる。推計データと違い、課税対象所得が根拠であるので、数字の信頼性も十分である。

図1

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「個人所得指標」を使ったエリアマーケティング

図2

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例えば、ある高額なブランド品を展開している企業が、新たな店舗をどのエリアに作るかを検討する。このブランドは、路面の単独出店はせず、百貨店・SC内のテナント出店のみであり、かつイメージを守るため急激な店舗数拡大も行わない方針であるので、まずはポテンシャルの高いエリアを探すことが第一歩となる。

具体的には「個人所得指標」を用い、既存の顧客データを市町村ごとに集計をし、

  1. 所得水準が高く(所得指標が110以上)
  2. 小売業の吸引力が強く(小売シェアが所得シェアを上回る)
  3. 既存顧客が多い(顧客数が500人以上)

こういう条件を持った市町村を探すのである(図2)。

図2

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著者紹介

著者近影

平下 治

株式会社ゼンリンマーケティングソリューションズ 顧問。1943年生まれ。
地理情報システム学会GIS 資格認定協会「GIS上級技術者」第1号認定
1979年エリアマーケティング専門コンサルタント会社、株式会社JPSを設立。以来マーケティング分野のGISの開発、データコンテンツの企画・製作、GIS運用コンサルティング業務に41年間従事し、延べ1,000企業以上への提案・実践の実績を持つ。
エリアマーケティング関連著書・専門誌への投稿も多数。
また、セミナーや研修では日本全国各地はもとより米国、中国、香港、セルビアなど海外講演も多数。
ビジネスGISの草分け的存在でわが国の第一人者。

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