地域ごとの市場規模を可視化

GIS専門誌に掲載していた記事が公開できることとなりました。
過去を振り返ることにより、現在のヒントになることは意外と多いものです。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

※ この記事は、2007年10月にGIS専門誌へ掲載された内容です。

マーケットサイズを知ることはマーケティングの第一歩

生活用品や食料品などのメーカー、あるいは小売業・卸売業のような流通業にとって、マーケティングにGISを利用することは、ごく当たり前のこととなってきているが、マーケティング目的に応じた有用なデータを最初に準備しなくてはならないのは、どんなユーザでも同じである。

そしてメーカーにとっても流通業にとっても関心が非常に高いのは、自社のマーケットがどのような特性があるかを知ることである。特に小売業にとって自社が展開する店舗の商圏にどれほどの規模のマーケットがあるか、そのマーケットを自社店舗はどれほど獲得しているかを知ることは、戦略立案上の必須事項である。

多層的なマーケットを如何に定量的にとらえるか

例えば、従来の食料品スーパーであれば、一人当たり、一世帯あたりの食料品支出額にそれほど極端な地域差はないので、商圏内の人口・世帯数を知ることによって地域の市場規模を大まかに類推することも可能であった。

しかしながら、昨今の小売業界では業態のボーダーレス化・クロスオーバー化が進んでおり、例えば生鮮食料品、衣料品、医薬品、住関連などを1フロアで扱うスーパーとホームセンターの中間のような「スーパーセンター」という新業態が登場したり、あるいは同じホームセンター業態であってもグリーン売場、DIY用品、生活雑貨、家電品などそれぞれの取扱いは店によって異なり、そうするとある商品ジャンルではこの店と競合し別の商品では別の店と競合するということになったり、ある商品ジャンルと別の商品ジャンルでは商圏が異なるということが現実の状況としておこってきているのである。

地域のマーケット規模や競合関係は、ことほどさように複雑であり単視眼的にとらえることはできなくなってきているのである。

小売業にとって特に出店計画の際にマーケットの規模や特徴を正確に把握することは必須条件であるが、このような複雑な環境になってくると、商品ジャンルごと、極端に言えば取扱品目ごとにマーケットを捉え直すというキメ細かい作業が必要になってくる。単に商圏内の人口・世帯数を集計するだけでは済まないのである。

地域のマーケット規模を表す「消費支出推計データ」

例:家事用消耗品の支出額

例:家事用消耗品の支出額

このような環境のもと、全部で620に及ぶ詳細な商品品目ごとの地域の市場規模を表す指標データとして企画・開発されたのが「消費支出推計データ」である。「消費支出推計データ」は、総務省が継続的に調査している「家計調査」を基礎データとしたものである。

「家計調査」は調査対象約8000程度のサンプル調査であるため、県庁所在地別、地方別に世帯あたりの品目別支出額を表してはいるが、全国全エリアをカバーすることはできない。そこでこれを独自の手法により全国のメッシュ毎、町丁・字等毎の消費支出額として推計作成されたものである。つまりは言い替えると地域の市場規模を表すデータなのである。

このデータを用いることにより、生鮮食料品、加工食品、衣料品、薬品、生活雑貨、DIY用品など細かな商品ジャンルごとの市場分析が可能になり出店計画に有効に活用できるようになったのである。

例:家事用消耗品の支出額

例:家事用消耗品の支出額

著者紹介

著者近影

平下 治

株式会社ゼンリンマーケティングソリューションズ 顧問。1943年生まれ。
地理情報システム学会GIS 資格認定協会「GIS上級技術者」第1号認定
1979年エリアマーケティング専門コンサルタント会社、株式会社JPSを設立。以来マーケティング分野のGISの開発、データコンテンツの企画・製作、GIS運用コンサルティング業務に41年間従事し、延べ1,000企業以上への提案・実践の実績を持つ。
エリアマーケティング関連著書・専門誌への投稿も多数。
また、セミナーや研修では日本全国各地はもとより米国、中国、香港、セルビアなど海外講演も多数。
ビジネスGISの草分け的存在でわが国の第一人者。

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