出店計画の基礎データとして有用な駅乗降者数データ

GIS専門誌に掲載していた記事が公開できることとなりました。
過去を振り返ることにより、現在のヒントになることは意外と多いものです。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

※ この記事は、2008年1月にGIS専門誌へ掲載された内容です。

多店舗展開を行う企業が出店計画にGISを活用するのはもはや常識的な光景となりつつある。出店候補地・候補物件があった場合、GISを用いてその商圏内の人口・世帯や競合などを集計して潜在的な市場の大きさ、地域の特性を調べ、出店可否判断の材料の一つとするという方法もあれば、市場環境の比較的よい地域すなわち出店最適エリアを探し出して、絞り込まれたエリアの中で具体的に候補物件を探すという方法もある。

例えば、駅前出店戦略を取る企業があったとする。この企業にとっては、どの駅の出店ポテンシャルが高いかを基準に考えて、ポテンシャルの高い駅があればその駅前周辺で最も条件のよい物件を探すのが効率的である。

今回紹介する「駅別乗降者数総覧」は、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所が提供する駅ごとの乗降者数データに、株式会社JPS(現:株式会社ゼンリンマーケティングソリューションズ)が経度緯度情報を付加したもので、このような場面で効果的に活用できるGISデータコンテンツである。

エリアデータとの組合せにより駅の性格が明確に

鉄道の駅と言えば、多くの人が行き交う場所であり、一つの強力な集客機能を持った施設である。しからば乗降者数の数字そのものが、その駅の集客力を表すと言い換えることも出来る。しかしながら一口に「駅」あるいは「駅前立地」といってもその性格は多様であり、その地域特性はいろいろな角度から捉える必要がある。

一つの考え方であるが、GIS上でこの「駅別乗降者数総覧」の背景に国勢調査のメッシュデータ、商業統計メッシュデータを整備し、駅を中心に半径300m圏内に含まれる人口、小売業販売額、小売業売場面積、買回品売場面積などの統計指標を集計する。こうして集計したデータから得られる人口1人当たり小売業販売額(1人当り販売額)と、小売業売り場面積に占める買回品売場面積の比率(買回品比率)に着目する。この「1人当り販売額」が平均より高い駅というのは周辺地域から買物客を吸引する、すなわち人口流入型の地域と見なすことができる。反対に「1人当り販売額」の低い駅は流出型である。

さらに買回品比率の高低を加えることによって大きく4つに分類することが出来る。ここでは便宜上「大都市駅前型」、「住宅地駅前商店街型」、「郊外型」、「ベッドタウン型」と分類した(図1)。

このように見ることによってそれぞれの駅および駅前立地の性格・特性が明確に浮きがって来る。下の図2は、駅のタイプごとに地図上で色分けしたマップである。駅の乗降者数が多く集客性が高いように見える駅であっても、その性格は多様であり特性に合わせた出店計画の必要性が視覚的に見えてくるのである。

図1

図1

図2 駅の性格別の色分け

図2 駅の性格別の色分け

著者紹介

著者近影

平下 治

株式会社ゼンリンマーケティングソリューションズ 顧問。1943年生まれ。
地理情報システム学会GIS 資格認定協会「GIS上級技術者」第1号認定
1979年エリアマーケティング専門コンサルタント会社、株式会社JPSを設立。以来マーケティング分野のGISの開発、データコンテンツの企画・製作、GIS運用コンサルティング業務に41年間従事し、延べ1,000企業以上への提案・実践の実績を持つ。
エリアマーケティング関連著書・専門誌への投稿も多数。
また、セミナーや研修では日本全国各地はもとより米国、中国、香港、セルビアなど海外講演も多数。
ビジネスGISの草分け的存在でわが国の第一人者。

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