エリアマーケティングの最大目的。地域特性の視覚化による店舗戦略。

GIS専門誌に掲載していた記事が公開できることとなりました。
過去を振り返ることにより、現在のヒントになることは意外と多いものです。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

※ この記事は、2007年7月にGIS専門誌へ掲載された内容です。

商圏特性の把握

流通業やサービス業で一番重要なのは店舗の商圏把握である。今では、ほとんどの企業が常識的にGISを利用し、自店の商圏を徹底的に分析している。

例えば、新規出店する際には、先ず、出店予定地の立地や店舗規模、店舗形態を考慮した商圏設定をする。そして、その商圏の市場規模や競合状況を分析し、その上で需要測定や売り上げ予測をするのが基本である。

また、既存店の販促戦略に於いては、新規出店時に想定した通りの商圏が確保できているかどうかを確認するため、来店調査やカード会員の分布図を作成するなどして実勢商圏を把握している。

新規出店時も既存店の販促のいずれにしても重要なのは先述の通り商圏特性を把握することである。

商圏特性をビジュアル化する

図1:地区町村ライフスタイル別地域特性

図1:地区町村ライフスタイル別地域特性

例えば、ある地域である商品の広告・宣伝計画をするとしよう。仮に、この商品のターゲットはキャリアアップを狙っているヤング層だとする。

これまでは、広告を打とうとするエリアの年齢、収入、学歴、職業など各種のデータを収集し、これを分析して地図に表示し、そのエリアの数字を集計して予算を決めるという作業を行っていた。これはこれで正解だが実はこの作業が結構面倒である。

この作業の前に、対象エリアで概ねどの程度のターゲットエリアがあり、どのくらいの費用が必要かを簡単に算出する方法があれば大いに役立つはずだ。

そこで、次のような方法を考えた。

先ずは、対象エリア(例えば神奈川県)で広告を必要とする市区町村を選ぶ場合、各市区町村のライフスタイルをグラフ化してみた。(図1)

図1:地区町村ライフスタイル別地域特性

図1:地区町村ライフスタイル別地域特性

この場合のターゲットとなるライフスタイルは、キャリアアップを狙うヤング層、色で示すとブルー系である。そこで、ある程度の市場規模を持ち、且つ、ブルー系の比率の高い市区町村を選ぶだけで、概算費用ははじき出せる。具体的にはGISを使っての細かな戦略立案が必要になるが、先ずは、「この地域なら、このくらいの費用が必要だ」が瞬時に分かる事は極めて重要である。

その点において、各市区町村のライフスタイルがビジュアルに整理されていればどんな計画にも即対応が可能であり、ビジネスチャンス広がることにもなるはずだ。

チェーン店の店舗特性

仮に、全国に1000店のチェーン展開をしているフランチャイズの本部があるとしよう。本部は基本的には、1000店に同じコンセプトで店舗展開をする。これは当然のことであるが、全ての店舗が、同じ商品構成で、同じ戦略を立てることはないと思う。店舗の立地や商圏特性によってその戦略は当然異なるはずである。

事例:レストランチェーン店舗別戦略

このレストランのフランチャイズ本部は県内にある約40店舗あまりの店舗にそれぞれの販売促進計画を立てることにした。

出店計画時には各店舗の周辺にどのくらいの昼夜間人口があるか?年齢層は?収入は?など調査している。勿論、前面道路の幅員や交通量、それにどのくらいの車が?自転車が?歩行者が?そして、どんな人が?学生さん?主婦?サラリーマン?などの現地調査もしている。

ある基準を設け、その基準をクリアした物件に出店している訳である。しかし、一律に売り上げは確保できないのが現状だ。そこで、次のような戦略を立て、実践することにした。

図2:店舗分布図

図2:店舗分布図

図3:各店舗ライフスタイルグラフ

図3:各店舗ライフスタイルグラフ

各店舗の周辺のライフスタイルを調べてみた。(図2)これを一覧表にし、グラフ化して見ると次のような結果を得た。(図3)

結果は一目瞭然である。各々の店舗でこんなにも異なることが明らかになったのである。

早速、同色で店舗を分類した。以下がその表である。(表1)

更に、この分類に加えて、GISで集計した、例えば、年齢送別、収入別の分類も考慮した作戦も考えられる。(表2)

表1:店舗分類1(ライフスタイル)

表1:店舗分類1(ライフスタイル)

表2:店舗分類2(年齢・収入)

表2:店舗分類2(年齢・収入)

この結果は、マーケティング担当者のみならず各店舗の店長も納得の行くものとして認識した。各色別に店長が集まれば、多分、同じ悩みを持っているはず、そこで、自店の売れ筋商品、人気商品、逆に、売れない商品など、更には、各店長の経験や工夫を語り合うことでコミュニケーションが生まれた。そこから得られる情報を参考に販促計画を練り直すなど、新たな店舗展開が可能になるとの期待が高まっている。

著者紹介

著者近影

平下 治

株式会社ゼンリンマーケティングソリューションズ 顧問。1943年生まれ。
地理情報システム学会GIS 資格認定協会「GIS上級技術者」第1号認定
1979年エリアマーケティング専門コンサルタント会社、株式会社JPSを設立。以来マーケティング分野のGISの開発、データコンテンツの企画・製作、GIS運用コンサルティング業務に41年間従事し、延べ1,000企業以上への提案・実践の実績を持つ。
エリアマーケティング関連著書・専門誌への投稿も多数。
また、セミナーや研修では日本全国各地はもとより米国、中国、香港、セルビアなど海外講演も多数。
ビジネスGISの草分け的存在でわが国の第一人者。

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