販売業・サービス業のエリアマーケティング

GIS専門誌に掲載していた記事が公開できることとなりました。
過去を振り返ることにより、現在のヒントになることは意外と多いものです。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

※ この記事は、2006年7月にGIS専門誌へ掲載された内容です。

ビジネス分野にGISを活用する。地図を利用した、販売業・サービス業の代表的活用シーンを紹介しよう。

カーディラー

図1:車種別担当セールスマン顧客分布図

図1:車種別担当セールスマン顧客分布図

取り扱う車種によって攻めるエリアは違う。自店テリトリーエリア内にどのようなライフスタイルの人が多く住んでいるか、当然、出店時に調査している。そのエリアも年々変化しているはずである。自店のテリトリーエリアを常に知っておくことが重要である。

さらには、既存ユーザーを地図にプロットして顧客管理をすると営業効率が数倍に上がると実例が出ている。GISを活用した“セールスマン指示システム”である。個々のセールスしか知らない顧客の家をすべて店で把握しておくと営業のみならずサービスにも効率的である。所長が各セールスに“ついで営業”(目的の顧客を訪問する行き帰りに立ち寄る営業)の指示が可能となる。セールスマン「支援」でなく「指示」である。

図1:車種別担当セールスマン顧客分布図

図1:車種別担当セールスマン顧客分布図

損保代理店

損保代理店で契約者の顧客管理をGISで行う。顧客廻りをするセールスにとって、訪問先が地図上で確認できているので効率のよい営業が可能である。「ついで営業」が契約に結びついている。

事務機販売顧客管理

ルートセールスという業務はいかに効率よく顧客廻りをするかということがポイントである。今日訪問する顧客を地図上で検索し効率のよいルートを考える。但し、セールスの都合だけで訪問先を決める訳には行かないので、顧客の要望に応えながら、地図で訪問先を確認すると効率のよい訪問営業が可能となる。

牛乳販売店

毎朝、家庭に牛乳を配達する。もし、配達員が急病や都合で配達が出来ない時など、地図上に契約者が管理され、しかも、配達する商品まで記載されていれば便利である。また、配達順路もルート別に管理(地図上に配達順に番号が表示)されていればなお便利である。

さらには、お客さんが旅行などで留守をされる時など、前以てその情報をGISで処理されていればトラブルになることもない。

新聞販売店顧客獲得(及びルート図管理)

新聞販売店は朝刊と夕刊を配達するほかに集金業務がある。また、契約切れの顧客に継続して購読をお願いする営業もある。

また、最近では顧客の都合で配達しない日もある。何百人もの顧客情報をすべて一人の配達員が管理する。間違いもある。クレームも多い。GISで顧客管理を行いトラブルが激減している。

玄関マット、モップ等リース業

業務用、家庭用に限らずリースマットやモップは交換時に集金してはじめて売上になる。

セールスの訪問効率を好くすれば売上も上がるはずである。各セールスが自分の顧客先をGISで訪問営業ルート上に効率よく配置し、管理できれば無駄のない営業が可能となる。

美容室向け材料販売業

基本的には上記業種と同様に訪問営業をしている場合の効率化はGISの有効な活用法である。

このような業界ではなかなか新規取引先を獲得することは困難だがセールスの訪問ルート上に未取引の美容室をプロットし、日々の営業時の観察調査を基にA・B・Cなどの印をつけて置く。

例えば、ある特殊な製品が開発され発売された時など、そのお店の雰囲気(A店タイプ)などで思い切った飛び込み営業を仕掛ける。

クリーニング(顧客周り型)

無店舗で客先を軽トラック等で訪問し洗濯物の“御用聞き”をしているクリーニング取次ぎ、配達業。この業務にGISを活用し好成績を上げている。

定期的に月曜日と木曜日、火曜日と金曜日の2つのコースを巡回している。顧客一人一人を地図上にプロットし、それぞれの顧客の取引状況を3段階に色分けている。月平均売上金額やシーズンの切り替え時期の扱い点数など顧客属性データを地図上で管理している。これらを分析し、空いている水曜日や土日に上顧客を効率好く訪問している。

セールスマン適正配置計画

図2:セールスマン別顧客分布図

図2:セールスマン別顧客分布図

どのような業種でも営業拠点を中心に、セールスマンのテリトリーは決まっているものである。しかし、何等かの都合でそのテリトリー内に複数のセールスマンがいる場合もある。このような時、GISで全顧客をセールスマンごとに色分け表示してみると以外にも、決めたはずのテリトリーが実際は有って無いような状況になっていることが多い。セールスマンにも色々と事情がある。親戚とか知人を顧客にするケースが多いからついテリトリーを無視する。どう見ても効率が悪い場合は見直す必要がある。GISで簡単に調整可能である。

図2:セールスマン別顧客分布図

図2:セールスマン別顧客分布図

レンタルショップ(顧客管理・エリア管理・売上分析、出店計画)

CD、VTR、DVDなどのレンタルショップでもGISが使われている。顧客情報をGISで分析することによって、どの地域にどのような顧客が多いかなどが把握出来る。そして、その地域に合ったチラシ広告などの計画に活用している。また、出店適地の選定にも大きな役割を果たしている。

飲食店・ファーストフード店(出店計画・既存店評価・店舗比較・売上分析・メ二ュー構成・来店調査・広告代理店広告計画・販促計画)

特にロードサイド型の外食チェーン店では出店予定地の市場規模、地域特性、立地分析は勿論のこと、前面道路の交通量や車種の分析などによって出店計画を行っている。先ずは、持ち込まれた物件をGISで分析し、現地調査に出向くかどうかを判断する。

また、既存店の評価、適正売上、地域特性によるメニュー構成、更には看板やチラシ広告計画、顧客のCS調査結果をGISで地域分析するなど多岐にわたって活用している。

税理士・会計士事務所(顧問先コンサルティング)

今や税理士・会計士事務所は、毎年の決算報告書作成や会計検査業務だけを行うという訳ではない。顧問先の業績を考え、マーケティングの指導、提案などのコンサルティングも役目のひとつとなっている。こんな時のために、税理士・会計士事務所がGISを導入し、提案ツールとして活用しているケースが多い。

具体的なコンサルティングの内容は上記のような業務だが顧問先に必要な基本的なデータを整備し、これに顧問先のデータを入力して具体的な販売計画などを一緒に企てている。

著者紹介

著者近影

平下 治

株式会社ゼンリンマーケティングソリューションズ 顧問。1943年生まれ。
地理情報システム学会GIS 資格認定協会「GIS上級技術者」第1号認定
1979年エリアマーケティング専門コンサルタント会社、株式会社JPSを設立。以来マーケティング分野のGISの開発、データコンテンツの企画・製作、GIS運用コンサルティング業務に41年間従事し、延べ1,000企業以上への提案・実践の実績を持つ。
エリアマーケティング関連著書・専門誌への投稿も多数。
また、セミナーや研修では日本全国各地はもとより米国、中国、香港、セルビアなど海外講演も多数。
ビジネスGISの草分け的存在でわが国の第一人者。

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