競争が激化する家電量販店業界

GIS専門誌に掲載していた記事が公開できることとなりました。
過去を振り返ることにより、現在のヒントになることは意外と多いものです。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

※ この記事は、2008年10月にGIS専門誌へ掲載された内容です。

日本の家電流通における小売市場規模は約10兆円と言われているが、そんな中「家電量販店」といわれる業態による市場の集中化・寡占化が近年激しく進行しており、業界上位12社の販売額で全体の約6割を占めるにいたっている。特に業界1位のヤマダ電機の売上高は、2008年度には2兆円に達しようという勢いであり、小売業全体からみてもセブン&アイ・ホールディングス、イオングループに次いで国内3位という規模である。

また近年、M&Aによる業界再編も進み、さらに競争激化する市場環境下にあっては、家電量販店業界にとって新規出店や既存店の統廃合を行うには、単なる勘や経験だけではない客観的なデータに基づいた判断材料が求められるようになってきており、GISをいかに上手に運用するかが重要になってきている。

売上規模の情報が全店収録されているポイントデータ

今回ここに紹介する「家電・PC量販店ポイントデータ」は、家電・AV業界の専門情報誌出版や市場調査の株式会社リックが毎年調査を行い、約3900店舗の情報が収録されている「全国家電・PC量販店ショップリスト」にGIS上で利用できるよう株式会社JPS(現:株式会社ゼンリンマーケティングソリューションズ)が座標を付加したものである。

「家電・PC量販店ポイントデータ」の特徴は、株式会社リックが、ほぼすべての店舗について売上高規模をAからEの5段階で推定し収録していることである(一部インショップ型店舗は除く)。個別の店舗の売上高は、ユーザが特に欲しがる情報であるものの非常に調査しにくく、一般的には収録率が低い項目である。

もちろん売上高のランクであって、正確な数字としては表示されないが、ほぼ全店に収録されているその情報は、家電量販店業界または家電メーカーにとって非常に有用なデータベースとなりうるものである。

新規出店候補エリアの検討

例えば、ある企業は、新規出店候補エリアを検討する際、GIS上に「家電・PC量販店ポイントデータ」を乗せて、自社店舗、販売力の強い競合店、さらにその他店舗を売上ランク別に円の大きさを変えて表示させ、家電量販店の未出店エリアをまず見えるようにする(図1)。

図1

図1

図2

図2

次に「小売業販売額」と「人口一人あたり小売業販売額」の高低を地図上で色分けして表示した(図2)。

小売業販売額が高く、かつ人口一人あたり小売業販売額の高いエリア(濃い黄色)は、すなわち集客性の高いと考えられるエリアである。

このようにして競合性が低く、集客性の高いエリアを出店好適地とし、さらに詳細な出店の検討へと入っていくわけである。

著者紹介

著者近影

平下 治

株式会社ゼンリンマーケティングソリューションズ 顧問。1943年生まれ。
地理情報システム学会GIS 資格認定協会「GIS上級技術者」第1号認定
1979年エリアマーケティング専門コンサルタント会社、株式会社JPSを設立。以来マーケティング分野のGISの開発、データコンテンツの企画・製作、GIS運用コンサルティング業務に41年間従事し、延べ1,000企業以上への提案・実践の実績を持つ。
エリアマーケティング関連著書・専門誌への投稿も多数。
また、セミナーや研修では日本全国各地はもとより米国、中国、香港、セルビアなど海外講演も多数。
ビジネスGISの草分け的存在でわが国の第一人者。

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