エリアマーケティングに必須な昼間人口データ

GIS専門誌に掲載していた記事が公開できることとなりました。
過去を振り返ることにより、現在のヒントになることは意外と多いものです。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

※ この記事は、2009年1月にGIS専門誌へ掲載された内容です。

企業がエリアマーケティングを展開するにあたり、どのような年齢の人がどれほど住んでいるかといった地域の特性を知る手立てとして、国勢調査の地域メッシュ統計や町丁・字等別集計をGIS上に整備し、これがマーケティング上の一つの重要なプラットフォームであると理解されることが多い。

しかしながら、ターゲット層の存在をつかまえる上で、単に居住地ではなく、昼間の通勤地や通学先はどこかを知ることのほうがより重要になる場合もある。

例えば、オフィス用品の販売店、携帯電話の販売拠点、銀行の支店やATMの配置、ビジネスマン・OL対象の弁当の移動販売などにとっては、昼間人口を知ることのほうが重要であるし、また駅前やビジネス街、商業地などに出店する店舗にとっては、昼間人口について詳しく知ることで適切な品揃えもまた可能になってくる。

性別・年齢別に推計された町丁・字等別昼間人口データ

昼間人口に関する統計としては、総務省統計局より「国勢調査、事業所・企業統計調査等のリンクによる地域メッシュ統計」が公表されており、有用な統計データではあるものの、一方、年齢構成などに関する項目はないとか、あるいは町丁・字等別に集計されたものはないなど、多角的な分析を行うには限界がある。

そうした中、今回は、株式会社日本統計センターが提供する「推計昼間人口」を紹介したい。これは、国勢調査の「従業地・通学地集計」、「町丁・字等別集計」および「事業所・企業統計調査町丁・大字別集計」などを用いて同社が推計作成した性別・年齢5階級別の町丁・字等別の昼間人口データである。国勢調査の町丁・字等別地図(境界)データとマッチするように制作されているため(AlpsMAP版も制作されている)、国勢調査町丁・字等別集計の人口データと同一条件下での分析が可能であり、夜間人口に対し昼間人口の増加数の大きい地域はどこかといった比較分析も可能である(図1)。

図1

図1

図2

図2

このような「推計昼間人口」をGIS上に整備することにより、例えばビジネス街でランチ弁当の移動販売を展開する企業にとっての移動販売用車の配置計画、オフィス用品の販売拠点の配置計画などへ活用することも考えられる。

例えば図2は、昼夜間人口増減数と主なターゲット年齢構成比によるオーバーレイマップである。濃い赤色の地域は、昼間の特にターゲット層が多く集中してくる地域であると想定され、このように拠点配置計画をする上で重要な地域の発見に活用することが可能となってくるのである。

著者紹介

著者近影

平下 治

株式会社ゼンリンマーケティングソリューションズ 顧問。1943年生まれ。
地理情報システム学会GIS 資格認定協会「GIS上級技術者」第1号認定
1979年エリアマーケティング専門コンサルタント会社、株式会社JPSを設立。以来マーケティング分野のGISの開発、データコンテンツの企画・製作、GIS運用コンサルティング業務に41年間従事し、延べ1,000企業以上への提案・実践の実績を持つ。
エリアマーケティング関連著書・専門誌への投稿も多数。
また、セミナーや研修では日本全国各地はもとより米国、中国、香港、セルビアなど海外講演も多数。
ビジネスGISの草分け的存在でわが国の第一人者。

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