人流データによる行動分析
「テーマパークと観光地の事例」

Release 2023/08/21

人流データによる行動分析「テーマパークと観光地の事例」

目次

はじめに

新型コロナウイルス感染症は、2019年12月上旬に、中国の武漢市で1人目の感染者が報告されてから急速に広まり、世界的な流行となりました。

日本においても2020年1月15日に最初の感染者が確認された後、感染者が急増し、2021年8月には感染者数が累計100万人を超えています累計100万人を超えています。

さらに今年5月には累計3,000万人を超えるに至りました。(図1)

新規感染者数(図1)

図1:新型コロナウイルス新規感染者数

新型コロナウイルスが与えた影響は大きく、人々の動きや考え方が変化している状況は、皆様も少なからず感じられているのではないでしょうか。今回は人流データを活用し、コロナ前(2019年)、コロナ禍(2020年、2021年)、コロナ緩和(2022年、2023年)で、どのような変化が起きており、どのような状況が読み取れるのかを考察していきます。特に人の動きが顕著に変化したと考えられるテーマパークや観光地をメインにしたいと思います。

人流データには、携帯電話・スマートフォンの高精度なGPS機能を用いた「KDDI Location Anaiyzer(以下KLA)」を使用します。

人流データによるテーマパークの分析

首都圏のテーマパークは、次の施設を対象にみていきます。(図2:赤

首都圏のテーマパーク(図2:赤★)

図2:首都圏のテーマパーク(赤

まず、KLAより各年のゴールデンウィークにおける1日あたりの来訪者数をグラフ化してみました。(図3)

ゴールデンウィークにおける1日あたりの来訪者数(図3)

図3:ゴールデンウィークにおける1日あたりの来訪者数

今回例に挙げた中でも最も来訪者が多いテーマパークは、「東京ディズニーリゾート」となっています。やはり、新型コロナウイルス感染症が蔓延し始めた2020年の来訪者は、どこのテーマパークも軒並み減少しています。

2021年になると「サンリオピューロランド」以外のテーマパークの来訪者は、2019年(コロナ前)と比較して約4割~6割まで回復。これは、サンリオピューロランドが完全屋内テーマパークの為、2020年は臨時休館していた影響がみられます。2022年~2023年にかけては、全てのテーマパークで徐々に来訪者が増え、回復の兆しがみられますが、コロナ前の来訪者までには戻っていません。

また、1日あたりの来訪者数を2019年(コロナ前)と比較したグラフにしてみました。(図4)

1日あたりの来訪者数を2019年(コロナ前)と比較(図4)

図4:1日あたりの来訪者数を2019年(コロナ前)と比較

今回例に挙げたテーマパークの中でも芝生広場など風通しの良い屋外施設が中心の「東京ドイツ村」、「マザー牧場」は、2021年の来街者はコロナ前と比較して来訪者が5割を超え、さらに屋外展示が多い「鴨川シ―ワールド」、「東武動物公園」を含めた4施設は2022年には7割を超え、比較的に早い回復傾向を見せていました。

2023年5月8日には新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「2類相当」から「5類」に移行されることから、2023年は「東京ディズニーリゾート」や、「サンリオピューロランド」などの屋内施設が中心のテーマパークにも人が流れた為に、これらの施設は微増、屋外施設中心のテーマパークは微減傾向を見せた。

首都圏以外のテーマパークは、次の施設を対象にみていきます。(図2:青

首都圏以外のテーマパーク(図2:青★)

図2:首都圏以外のテーマパーク(青

首都圏と同様に、各年のゴールデンウィークにおける1日あたりの来訪者数をグラフ化してみました。(図5)

ゴールデンウィークにおける1日あたりの来訪者数(図5)

図5:ゴールデンウィークにおける1日あたりの来訪者数

首都圏同様に、新型コロナウイルス感染症が蔓延し始めた2020年の来街者は、どこのテーマパークも軒並み減少しています。

ここでも傾向として顕著なのが、「あしかがフラワーパーク」と、「ひたち海浜公園」で、他者との距離を取りやすい屋外施設中心の2施設。2021年には、来訪者の回復が比較的早い傾向を示し、2023年は「5類」への移行の影響からか、減少傾向がみられた。

さらに、1日あたりの来訪者数を2019年(コロナ前)と比較したグラフをみてみると、2021年に、他のテーマパークと比較して来訪者が戻っていない施設が、「USJ」と、「海遊館」です。こちらは、どちらも大阪府にあり、その当時の緊急事態宣言や、まん延防止対策などの施策が大阪府で多く採用されていたことから、他の都道府県にあるテーマパークと比べると、回復が停滞していたのではないかと考えられます。(図6)

1日あたりの来訪者数を2019年(コロナ前)と比較(図6)

図6:1日あたりの来訪者数を2019年(コロナ前)と比較

人流データで探る主要テーマパークの来訪者動向

ここでは、「東京ディズニーリゾート」、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」における来訪者が2019年(コロナ前)に比べ、どの都道府県から来訪しているかをみてみます。

東京ディズニーリゾート来訪者動向(図7)

図7:東京ディズニーリゾート来訪者動向

2020年は移動制限や入場制限の影響もあり、周辺の都道府県からしか訪れていないうえに、2019年比の2割未満にまで落ち込んでいました。2021年にはほぼ全国からの来訪がありましたが、その多くはやはり首都圏からの来訪中心でした。それに比べ、2022年、2023年と年が進むにつれて2019年比の割合が高くなっている都道府県が増えている状況がみえることから、移動範囲が広がっているようにみえます。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン来訪者動向(図8)

図8:ユニバーサル・スタジオ・ジャパン来訪者動向

2020年は、2019年比の2割未満に落ち込んでいましたが、東京ディズニーリゾートに比べると遠方からの来訪者もありました。しかし2021年は東京ディズニーリゾートがほぼ全国から訪れるようになったのに対してあまり来訪者の広がりがみえない状況でした。2022年、2023年になると東京ディズニーリゾート同様に全国からも来訪するようになり、2019年比の割合も高くなっていることから、移動範囲の広がりかみえます。

人流データから見る国内旅行者数の回復動向

旅行・観光消費動向調査によると、国内旅行者数は2019年を基準としたときに2022年には7割まで回復(図9)

国内旅行者数(図9)

図9:国内旅行者数

2023年は1月から3月までの速報では8割強まで回復し、また「5類」への移行の影響も鑑みると更なる回復が予想される。

人流データによる観光地(温泉地)の来訪者数の変動と地域別動向

観光地(温泉地)は、次のエリアを対象にみていきます。(図10)

観光地(温泉地)の来訪者数の変動と地域別動向(図10)

図10:観光地(温泉地)の来訪者数の変動と地域別動向

まず、KLAより各年のゴールデンウィークにおける1日あたりの来訪者数をグラフ化してみました。(図11)

ゴールデンウィークにおける1日あたりの来訪者数(図11)

図11:ゴールデンウィークにおける1日あたりの来訪者数

新型コロナウイルス感染症が蔓延し始めた2020年の来街者は、どこの温泉街も軒並み減少し、2019年(コロナ前)と比較すると2割程度まで落ち込んでいます。

2021年、2022年と徐々に回復し7割弱まで回復したが、2023年は「5類」移行直前のゴールデンウィークということもあり、温泉旅行に対して少し様子を見たのか、帰省傾向にあったのか2019年比の6割強と微減となりました。

また、「箱根小涌園ユネッサン」来街者の都道府県別推移みてみます。(図12)

「箱根小涌園ユネッサン」来街者の都道府県別推移(図12)

図12:「箱根小涌園ユネッサン」来街者の都道府県別推移

2019年ほどの広がりには戻っていませんが、年が進むにつれて徐々に遠方からの来街者が増え、移動範囲の広がりが見えます。

人流データを活用した施設分析の有効性

人流データを使用すると、その施設に起きている状況を可視化でき、且つ他の類似施設と比較することで、その施設の特徴をより鮮明に理解することができます。

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