商圏分析とは?分析手法や活用事例・6つのステップと成功のポイント

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店舗を運営するにあたって「新規出店はどこにするべきか」「既存店の売上を伸ばすにはどのようにすれば良いか」などのお悩みをお持ちの方へ、「商圏分析」を利用した基本的な分析方法や成功のポイントなどについて解説します。

Release 2022/09/01Update 2022/10/13

目次

  1. 商圏分析とは
  2. 商圏分析の目的
  3. 商圏分析の基本・6つのステップ
  4. 商圏分析を成功させるポイント
  5. 分析手法
  6. 商圏分析の活用事例
  7. 商圏分析実施のための必要なデータ
  8. まとめ

商圏分析とは

商圏分析とは、自社店舗や出店候補地などの商取引の対象とする地域の範囲内で、居住または訪問する人の属性や嗜好などをデータに基づき分析する手法のことです。
主に統計データや顧客データを活用して、地図上でマッピングし、商圏を把握していきます。

商圏分析のイラストイメージ

商圏分析の目的

新規出店・店舗開発

良い店舗(売上と利益に貢献できる店舗)を、継続的且つ安定的に出店するための目的として分析。

メリット スピーディー且つ数値的根拠をもった出店可否判断が可能になる
注意点 仮説をもつこと、仮説検証のための事実(ファクト)を集めること
なぜ必要? 成功・失敗のノウハウが蓄積(数値化)されず、開発者の勘と経験頼りになってしまう。ノウハウをもった開発者がいなくなった瞬間、これまでと同様の出店はできなくなる(企業としての成長が止まる)
何を得られる?
  • 出店の基準(△km内の人口が□万人以上など)
  • 売上予測の仕組み
  • 出店戦略

既存店活性化(売上改善)

売上向上施策(チラシ配布やDM送付、Web広告)の無駄をなくし、費用対効果をより高めるための目的として分析。

メリット 費用対効果の高い売上向上施策の実現
注意点 施策の検証(反響率など)は必須
なぜ必要? 非効率な施策を実施し続けることとなり、施策の費用対効果が上がらない。
効果の低い施策を続けてしまうと、結果的に費用のみが増加。
何を得られる?
  • 対象とすべき人・エリアの特定
  • より効果の高い販促計画
  • 無駄な施策の削減

商圏分析の基本・6つのステップ

自社データを
マッピング

自社店舗がどこにあって、お客様がどこから来店されているかを把握。

商圏範囲の
把握と設定

①の状況から、自店舗の商圏範囲を把握、定義

例:お客様(売上)の70%が3km内に存在≒自店舗の商圏範囲を3kmと設定

※70%程度にする理由:主たるお客様に絞ることで、分析や施策の精度を高めるため。

※自社データがない場合は、人流データなどで分析をすることが望ましい。

商圏範囲内の統計データを取得

設定した商圏範囲内の商圏特性(例:どんな人がどれだけ住んでいるのか)を調査。GISなどを活用し、商圏内の人口や世帯収入、男女比や年齢別人口などの情報を取得。

自店舗の強みと弱みの数値化

自店舗の売上の高低と、商圏内のデータを比較し、売上が高い(低い)店舗にはどのような傾向があるのかを数値化。

例:商圏範囲である3km内の20代人口が多いほど、売上が高い傾向にある。口が多くとも、商圏内に競合店が3店舗以上ある場合、売上は低くなる。

店舗ごとに
レポート化

個店ごとに自社店舗をレポート化。商圏の範囲やその人口ボリュームや特性、また自店舗の全体平均との比較を行うことで、よりそれぞれの店舗の特徴を把握しやすくなる。

※比較するデータは、4で確認したより売上に影響を与えていると考えられる項目で実施するとより効果的。

分析結果の
共有

店舗開発や分析担当者、また経営層へ共有。新規出店や既存店改善などのアクションを実施する際の、有効な情報となる。

商圏分析を成功させるポイント

仮説をもった分析の実施

分析実施のイラストイメージ

統計データの取得や羅列だけなら、作業としてだれでも実施可能。
分析として実施するには、なぜ商圏が広がっているのか、なぜこの店舗は売上が高い(低い)のかを仮説立て、それを検証するためにデータを使用することができれば、より効果的且つ効率的に分析が実施可能。

使用するデータの定義付け

様々なデータのイラストイメージ

どのようなデータであっても使用するデータの定義をはっきりさせる。

※顧客プロットデータを使用するなら、いつからいつまでの顧客データなのか

※顧客売上データを使用するなら、異常値となるような客単価の極端に高いお客様を含んでいないか

※競合店をプロット・集計する場合、なにを競合店としたのか(定義と理由を明確化)

※統計データを使用する際も、何年のデータなのかを把握

商圏以外のデータも活用する

様々なデータを組み合わせるイラストイメージ

商圏以外の要素やデータを組み合わせることで、本質的な分析が可能。

※すべてを商圏データで結論付けない

例:立地データ(交通量、歩行量、視認性など)
店舗データ(坪数、席数、店舗間口など)

3地点来訪者居住地分析

3地点来訪者居住地分析のイラストイメージ

1度分析を実施しただけでは、十分ではない。特に近年はコロナの影響もあって、売上や市場の状況は目まぐるしく変化するため、定期的な商圏の分析(商圏範囲に変化はないかなど)は必須。より鮮度の高いデータを使用することが、求められる。

分析手法

例:①ある飲食チェーン企業が新規出店を計画しており、既存店舗A~Eのデータをもとに候補物件の条件を探る
②さらに候補となる物件がどの程度の売上が見込めるのかを想定したい

※商圏範囲は事前に顧客プロット、または人流データなどから3kmと定義

店舗名 売上(千円) 3km人口(人) 3km競合数(店舗) 3km1店舗あたり人口
A店 10,000 500,000 2 166,667
B店 8,000 620,000 4 124,000
C店 7,500 330,000 2 110,000
D店 6,000 95,000 0 95,000
E店 5,500 150,000 1 75,000
平均 7,400 339,000 2 114,133
 
F物件 350,000 2 116,667

①を達成しようとする場合、当該事例では売上が自店舗の平均(7,400千円)以上が見込めるような条件を探ります。
平均(7,400千円)以上とした場合、3km人口はおおよそ30万人以上、さらに競合を考慮した人口は11万人以上、というのが候補物件の商圏に求められる商圏と考えます。さらにA~Cの店舗の周辺を確認し、「駅が500m内にある」や「競合との距離が1km以上離れる」などの共通する環境要因を抽出できれば、より成功確度の高い候補物件の条件が作成可能です。その結果“F物件”が候補として、挙がってきます。

②を達成しようとした場合、自社店舗の売上に大きく寄与する項目を比較することで、想定売上を算出可能となります。

※本来1つのデータのみでは表現できないが、当該事例ではもっとも売上と関係性の高い『3km1店舗あたり人口』によって売上を想定。

当該事例の場合、F物件の3km1店舗あたり人口116,667人となり、自店舗のなかではB店とC店の間に位置します。
よって、F物件の想定される売上は、B店とC店の間、つまり8,000千円~7,500千円の間程度になると想定されます。

商圏分析の活用事例

新規出店・店舗開発
どこに出すか? 出展候補エリア選定 既存店の商圏範囲を可視化できるため、次に攻めるべきエリアの明確化(既存店との自社競合を避けた出店)
どこと似ているか? 類似店比較 売上予測の際、類似する店舗を抽出し、より確度高く予測することが可能
いくら売れるか? 売上予測 自社の強みや売上の要因がわかっていれば、新規物件の売上を予測することも可能
どのようにして売るか? 提案 商圏内のお客様属性も把握可能なため、売り方や営業提案も可能
 
既存店活性化(売上改善)
売上が低い店舗は? 候補店舗の選定 商圏人口と売上を確認し、人口のわりに売れていない店舗を抽出
売上が低いエリアは? 販促候補エリアの選定 売上を町丁目ベースで可視化することで、売上の低いエリアを選定可能
どこに販促するのか? 効率的な販促 売上の低いエリア(町丁目)を中心に販促を行う
だれに販促するのか? 効果的な販促① さらに商圏分析から自社の顧客層がわかっていれば、売上の低いエリアの顧客層に呼びかければ、費用対効果の高い販促が見込める
どのように販促するのか? 効果的な販促② 「どこ」と「だれ」がわかっていれば、その層に効果的な販促形態を選択可能(折込?DM?web?交通広告?)

商圏分析実施のための必要なデータ

  項目 内容
1 統計データ 人口の量(人口数、世帯数)や質(年収や年代別人口)に代表される市場規模を測るデータ
2 自店舗プロットデータ 自店舗の位置情報
3 自店舗顧客データ 自店舗の顧客データ(アプリデータなど)*ない場合は人流データ
4 自店舗立地データ 自店舗の狭い範囲で発生しているデータ(例:交通量、通行量、視認性)
5 自店舗データ 自店舗の店舗に関わるデータ(例:坪数、席数、店舗間口、営業時間、駐車場台数)
6 競合プロットデータ 競合店舗の位置情報

※特に1・2・3は必須で、4~6を加えるとさらに深掘りが可能

まとめ

商圏分析とは 統計データや顧客データを活用して、自店舗の市場ボリュームや地域特性を把握すること
目的 大きく2点あり、「新規出店」に関わるものと、「既存店活性化」に関わるもの
新規出店 良い店舗(売上と利益に貢献できる店舗)を、継続的且つ安定的に出店するため
既存店活性化 売上向上施策(チラシ配布やDM送付)の無駄をなくし、費用対効果をより高めるため
基本ステップ
  1. 位置データのマッピング(自店舗、顧客)
  2. 商圏範囲の把握と設定
  3. 商圏範囲内の統計データを取得
  4. 自店舗の強みと弱みの数値化
  5. レポート化
  6. 分析結果の共有
成功のポイント
  1. 仮説をもった分析の実施
  2. 使用するデータの定義付け
  3. 商圏以外のデータも活用する
  4. 定期的な実施
必要データ
  1. 【必須】統計データ
  2. 【必須】自店舗プロットデータ
  3. 【必須】自店舗顧客データ(もしくは人流データ)
  4. 自店舗立地データ
  5. 自店舗データ
  6. 競合プロットデータ

※分析イメージや利用シーンは該当ページをご確認下さい

著者近影

著者紹介藤田 崇文

株式会社ゼンリンマーケティングソリューションズ クリエイティブ本部/デジタルソリューション部

エリアマーケティング、売上予測の分野に10年以上従事。コンサルティング会社にて小売・流通・飲食を中心としたクライアントへの分析業務に携わったのち、大手外食企業の店舗開発部門にて、売上予測、出店戦略を担う部門に参画。こうした経験を生かし、現在はエリアマーケティングを中心に様々な業界・業態へのアウトソーシング・分析業務を担当。

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